Posts Tagged ‘女の気持ち’

毎日新聞 女の気持ち

金曜日, 4月 30th, 2021

片付け下手 山形県・匿名(主婦・54歳)

毎日新聞 20210430 

 子どものころから片付けが苦手だった。しつけに厳しく体罰も辞さなかった母は、私を「だらしない!」としょっちゅう叱ったが、何の効果もなかった。それどころか学年が上がるにつれ、部屋の汚さはどんどんひどくなった。

 結婚し主婦になると、私は「整理整頓しなければ」という強迫観念にとりつかれるようになった。しかし、どれほど本や整理グッズを買い込んでも、片付け下手は直らなかった。実家を離れて何年たっても、母からの罵声やぶたれたときの痛み、部屋に踏み込まれたときの恐怖心などが私を悩ませ続けた。

 里帰り出産の折、当時3歳だった長男が母にいじめられたことがダメ押しとなり、心の病気になった。子どもたちに知られないよう「元気なお母さん」を演じながら精神科に通い、薬を飲み続けた。

 そして10年近くたったある日、母が急に亡くなった。「着る服がない」と父に言われて実家へ行き、驚いた。実家の押し入れという押し入れに、母がお嫁に来てから五十数年分の不用品がジグソーパズルのように詰め込まれていたのだ。母の服はたんすに6さお分あった。そういえば、母は「こうすればいいのよ」とやり方を教えてくれることはなかった。たぶん、母自身が片付け下手だったのだ。

 小さいころ、片付け下手を叱らなかったおかげだろうか。私の子どもたちは片付け上手に育っている。

困ったときは人に迷惑をかけてもいいんだよ

水曜日, 2月 10th, 2021

東京の義兄 女の気持ち・匿名

毎日新聞 20210210

最後の所持金はたったの1905円だった。東京で1人暮らしをしていた義兄が亡くなった。39歳。残されたメモには「コロナ感染の疑いあり」の一文とともに実家の連絡先が記されていた。

義兄は中卒でとび職人だった。2020年の東京五輪を控え、建設ラッシュだったころは羽振りもよく、数年前、夫にかけてきた電話では「お前も東京へ来いよ。日当いいぞ」などと話していた。

そして今年。義兄は失業していたようだ。保険証もなく、病院に行くこともできなかったのだろう。発見されたとき、死後1週間ほど経過していた。自死であった。検視でのPCR検査の結果は陰性。肺炎だったそうだ。

「自殺者数」という数字の裏側に、一人一人の人生がある。部屋で1人で思い詰めた義兄の心中を思うと、胸がふさがる。義兄の、日に焼けた顔と豪快な笑い声を思い出す。なぜ、電話を1本かけてくれなかったのだろう。義兄の死からずっと、夫と私はそればかり考えている。

これを読んでいるすべての人に伝えたい。コロナにかかることも失業も、自己責任なんかじゃない、と。そして「困ったときは人に迷惑をかけてもいいんだよ」と。人に迷惑をかけずに生きられる人など、いないのだから。

新聞配達 女の気持ち

土曜日, 2月 6th, 2021

毎日新聞20210206

 朝、吹雪の中を学校へ行く子どもたち。その姿を窓の外に見ながら「大変だねえ」と心の中でつぶやく。

 このところ盛岡でも、いつにない大雪だ。ふと、幼いころのことを思い出した。当時の冬はこんな日など当たり前。あるいはもっと大変だったかもしれない。どんなにひどい雪であろうが、子どもたちは皆、せっせと学校に通ったものだ。それは昔も今も変わらない。

 私は50代のころ、5年ほど新聞配達をして働いていた。そのときも私は天候について、さしてつらいだの嫌だの思いはしなかった。

 「マイナス12度だぞーっ、気をつけろ!」

 他紙を配達している人が叫んでいく。いてついた路面で滑って転ぶ。大雪でハンドルを取られ、新聞を前後に積んだバイクごと転倒したこともある。私自身、何度も怖い目に遭ったものだ。

 今思えば、どちらかというと運動の苦手な私が、よく続けられたと思う。バイクの運転免許を取り、自転車から乗り換えられたのも新聞配達のおかげである。

 あのころ、仲間が撮ってくれた写真がある。新聞をいっぱい積んだ販売店のバイクにまたがり、末娘のピンクのヘルメットをかぶった私は、笑顔だ。

 配達から戻り帰宅すると、そのバイクは次に末娘が仕事に出かけるのに使う、という毎日だった。

女の気持ち

土曜日, 1月 30th, 2021

さらに悪知恵?

毎日新聞 20210130

食事中に足りなくなったものを取りに行きたくないと悩む18日の本欄「悪知恵」に、なるほどと感心した。・・・

今日の女の気持ち~
続きも読みがいがあるので・・どうぞ

男の気持ち 父親卒業

土曜日, 8月 3rd, 2013
男の気持ち:父親卒業 仙台市青葉区・川合進(会社員・59歳)
毎日新聞 2013年08月03日 東京朝刊
先日、家族旅行をしました。2男2女と夫婦で総勢6人の韓国ツアーです。子離れ・親離れの家族卒業がテーマです。
私は今年、還暦。昔なら赤いちゃんちゃんこを着るところです。還暦は生年と同じ十干十二支に戻ることです。赤は生まれた時に帰る意味。私はこれからの時間を余生とするのではなく生まれ変わって新しい人生にしたいと思います。赤いちゃんちゃんこは着ずとも区切りになることをしようと考えました。
それが家族全員での旅行となったわけです。上は31歳の長男、末が23歳の次男、中が2人の娘たちです。
当世の晩婚化に抵抗することなく4人とも独り身を守っています。嫁さんや婿さんが入らない旅は最後かもしれず、修学旅行のようで家族の卒業にふさわしいと思ったのです。
旅行自体は焼き肉食べ放題、アカスリ、王宮巡りとごく普通のコースでしたが、地下鉄でドジって出られなくなったとか誰がオツリをごまかされたとか楽しく騒ぎました。全員でオンドル室に寝そべりゴロゴロした時間がよい思い出になります。
さあこれで父親業はおしまいです。これからは自分タイム。息子や娘がそれぞれに仕事の悩み、将来への焦燥感、現実と希望年収のギャップなど、いろいろな不安や迷いを抱えているのは分かっています。
でも、それは自分で乗り越えるしかありません。彼らの独立独歩を信頼して父親から一人の青年に生まれ変わり、唯我独尊わが道を歩くことにします。

男の気持ち 父親卒業 毎日新聞 20130803

先日、家族旅行をしました。2男2女と夫婦で総勢6人の韓国ツアーです。子離れ・親離れの家族卒業がテーマです。

私は今年、還暦。昔なら赤いちゃんちゃんこを着るところです。還暦は生年と同じ十干十二支に戻ることです。赤は生まれた時に帰る意味。私はこれからの時間を余生とするのではなく生まれ変わって新しい人生にしたいと思います。赤いちゃんちゃんこは着ずとも区切りになることをしようと考えました。

それが家族全員での旅行となったわけです。上は31歳の長男、末が23歳の次男、中が2人の娘たちです。

当世の晩婚化に抵抗することなく4人とも独り身を守っています。嫁さんや婿さんが入らない旅は最後かもしれず、修学旅行のようで家族の卒業にふさわしいと思ったのです。

旅行自体は焼き肉食べ放題、アカスリ、王宮巡りとごく普通のコースでしたが、地下鉄でドジって出られなくなったとか誰がオツリをごまかされたとか楽しく騒ぎました。全員でオンドル室に寝そべりゴロゴロした時間がよい思い出になります。

さあこれで父親業はおしまいです。これからは自分タイム。息子や娘がそれぞれに仕事の悩み、将来への焦燥感、現実と希望年収のギャップなど、いろいろな不安や迷いを抱えているのは分かっています。

でも、それは自分で乗り越えるしかありません。彼らの独立独歩を信頼して父親から一人の青年に生まれ変わり、唯我独尊わが道を歩くことにします。

気持ちを伝えられない口下手な人に頷く

木曜日, 8月 1st, 2013
女の気持ち:集金の人 埼玉県北本市・中里美恵子(主婦・59歳)
毎日新聞 2013年07月31日 東京朝刊
月末になると、新聞の集金人が我が家にやって来る。いつも私はおつりのないように封筒に新聞代を用意して、集金の人を待っている。50代とおぼしき女性の集金の人は、お金を渡す時に一言「いつもぴったりの金額でおつりがないので助かります」と言ってくれる。
決してお礼を言ってもらいたくてそうしているのではない。お金の受け渡しが速やかに行えるのでお互いに良いのである。でも一言言ってもらえると、気持ちが分かってもらえたようでうれしいのは確かだ。私以外にも多くの方がおつりのないように準備していることと思う。
ある新聞に替えることになって、当然集金人も変わった。今度の集金の人は30代の若い女性である。この集金の人は、おつりのない新聞代を何も言わず普通に受け取り帰っていく。もちろんそれでいいのだけれど、この2人の女性に接してみて、やはり感じるものがある。
それはちょっとでもうれしかったり良いことがあったりした時、それを言葉にして、相手に伝えることが大切だと、自分自身のこととして思うのだ。口下手で気持ちを相手に伝えるのが苦手な私は、これまで損をしたんじゃないかと思うことが少なくない。

女の気持ち 集金の人 毎日新聞 20130731

月末になると、新聞の集金人が我が家にやって来る。いつも私はおつりのないように封筒に新聞代を用意して、集金の人を待っている。50代とおぼしき女性の集金の人は、お金を渡す時に一言「いつもぴったりの金額でおつりがないので助かります」と言ってくれる。

決してお礼を言ってもらいたくてそうしているのではない。お金の受け渡しが速やかに行えるのでお互いに良いのである。でも一言言ってもらえると、気持ちが分かってもらえたようでうれしいのは確かだ。私以外にも多くの方がおつりのないように準備していることと思う。

ある新聞に替えることになって、当然集金人も変わった。今度の集金の人は30代の若い女性である。この集金の人は、おつりのない新聞代を何も言わず普通に受け取り帰っていく。もちろんそれでいいのだけれど、この2人の女性に接してみて、やはり感じるものがある。

それはちょっとでもうれしかったり良いことがあったりした時、それを言葉にして、相手に伝えることが大切だと、自分自身のこととして思うのだ。口下手で気持ちを相手に伝えるのが苦手な私は、これまで損をしたんじゃないかと思うことが少なくない。

性格だからという言い訳はやめて、これからは感じた気持ちを言葉にして相手に伝えたいと思う。ちょっとの言葉で人間関係が円滑に回っていく大きな秘訣(ひけつ)でもあるし、お互いの笑顔の元にもなって良いことずくめ、実行していきたいと思う。