介護のコトバ 三好春樹 毎日新聞6月23日
定年退職 男性はヘルパーを目指そう
定年退職は人生の大きな節目である。特に男性にとっては人生最大の危機だと言っていいかもしれない。
定年退職をきっかけにして家に引きこもりがちになり、気がついたら精神的に不安定になっていて「うつ病」と診断されることが少なくないのだ。
なかには認知症ではないかと見えるほどの人も珍しくない。
女性の場合は仕事を辞めても、家事といった役割があるし、地域での人間関係も継続していく。
しかし仕事一筋の男性は役割も人間関係も一度に喪失してしまうからだろう。
そんな男性の危機を一挙に解決するいい方法がある。
定年後の第二の仕事に介護を選ぶのだ。
おじさんたちが2級ヘルパーの資格を取得して在宅や施設の介護職になって奮闘する姿を描いたのが
「それゆけ!おやじヘルパーズ」(東田勉著、講談社、1575円)という本である。
ヘルパー養成講座では料理もマスターしなくてはならないし、家政学も老人心理学も勉強することになる。
介護現場での実習もある。
それは会社や官庁に勤めていた男性にとっては、これまで経験したことのない、”異文化”に触れることだが、
彼らはそれに悪戦苦闘しつつも楽しんでいるように見える。
そして現場に入れば、彼らの長年の経験が介護に大いに役立つのだ。
そのまじめさや交渉能力はもちろんだが、介護に最も大切な「常識」が何より役に立つのである。
私も今年で60歳。還暦になってしまった。
定年退職を迎える同級生たちよ、介護現場に入ろうではないか。
社会的問題となっている人手不足も解消するし、団塊世代のうつ病と認知症予防にもなって一石二鳥だ。
特に官僚の皆さん。
退職金も年金も十分にあるんだから、天下りなんかしないで一緒に介護をやろうよ。
次回は7月7日掲載