毎日新聞記事 女の気持ち~

谷川俊太郎withfriends『生きる わたしたちの思い』~
「ほしいと思って手に入れた でもそこに**はなかった…」

     気になる1冊です

50代デビュー 10月26日

 「私の体、壊れちゃったのかな!?」と憂える50歳の秋。婦人科の先生から「今が更年期のピーク! 節目だから、仕方がないのよ」と諭されたものの、うつうつとして浮上できない。

 50代デビューする年頭の冬、胃もたれと吐き気で胃腸科に駆け込んだら、即胃カメラ。血液検査で膵臓(すいぞう)も引っかかり、MRI。どちらも結果オーライだったが、その後もすっきりしない日々……。

 猛暑の夏は、グルグル目まいに襲われ、メニエール病と診断された。ストレスとステロイドの副作用で帯状疱疹(ほうしん)に--。生まれて初めて味わう痛がゆさ。9月に入ると、花粉症に見舞われ、今月は歯が痛み始めた。心もうずく。スケジュールは、お医者さん通いで埋め尽くされていく。

 孔子いわく「五十にして天命を知る」。平たく言えば、人生こんなものか、ということだと読んだっけ。何となく、うなずける。もう、あがくのはやめにしよう。体の声を聞いて、今年はメンテナンスの年と割り切った。

 「自然治癒力」。医者だった父がよく口にした言葉。私たちの体の中には、病気と闘うエネルギーが潜んでいるらしい。今まで頑張ってきてくれた体に「お疲れさま」といたわりの言葉を送り、自分の再生力を信じよう。父が亡くなった今も、その教えは「私の中に、ちゃんと生き続けているからね」。

家内がいれば 10月20日

 家内とは「どちらが先に逝(い)っても、残された方は愉快に楽しく人生を過ごそうね」と、常々約束していた。今考えると、お互いに結婚以来病気をしたことがなく、日本人の平均寿命ぐらいまでは生きられるだろうとのお気楽な考えが根底にあったように思えてならない。いざ家内に先に逝かれると、なかなかそのような気持ちになれない。

 家内を亡くして2年、知人が飲み会に誘ってくれる。会えば昔のように冗談を言い、ばか話をして面白おかしく時間を過ごすので、「思っていたより元気でよかった」と言われる。「あいつは元気にしているよ」と昔の仲間に口コミで伝わっているらしく、誘いがあると、また出かけている。本当のところ、「一人でしょんぼりしているのでは?」と思われるのがしゃくで、見えを張って無理に明るく振る舞っているところがある。

 一人になると、昔のように自然に振る舞うことのできない自分が情けなく、そして「家内がいればこんな気持ちを味わうこともないのに」との思いが家に着くといっそう強くなる。

 玄関ドアの呼び鈴を押すと、「お疲れ様」と言って玄関ドアを開けてくれた、笑顔の家内はもういない。ドアを閉めながら軽く抱き合ったことが昨日のように思い出される。まだまだ家内との約束は守れず、遺影の前で「お母さん、今日は見えを張ってしまったよ」とぐちる自分が情けない。

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