Dr.中川のがんの時代を暮らす


Dr.中川のがんの時代を暮らす:/37 クローンの特徴を利用
毎日新聞 2012年05月14日 東京朝刊
東京・隅田川の両岸を桜で彩ったのは八代将軍の徳川吉宗です。今から約280年前、享保の改革の一環として、吉宗は隅田川のほか、飛鳥山(王子)、御殿山(品川)などに桜を植樹し、飲食店まで用意させて、花見を奨励しました。放火など治安の悪かったこの時代、庶民に花見という娯楽を与えることによって人の心を安定させようとしたともいわれます。
しかし、当時、植えられた桜はヤマザクラでした。現在の日本の桜の8割を占め、花見の主役となっているソメイヨシノは、幕末になって人工的に作られた新種のため、吉宗の時代には存在していなかったのです。
ソメイヨシノは日本だけではなく、ワシントンのポトマック川やニューヨークのハドソン川などを美しく彩っています。ソメイヨシノが海を渡ったのは、衆議院議員で東京市長も務めた尾崎行雄が、アメリカのタフト大統領夫人の願いに応えて1912(明治45)年に寄贈したためです。
前回までに紹介したように、日本のソメイヨシノも、米国のソメイヨシノも同じ遺伝子を持つ「クローン」です。人工交配による雑種のため、挿し木によってしか増やせないためです。一方、多様性がなく、環境の変化に適応しにくいという性質があります。

Dr.中川のがんの時代を暮らす 37 クローンの特徴を利用 ~毎日新聞20120514~

東京・隅田川の両岸を桜で彩ったのは八代将軍の徳川吉宗です。今から約280年前、享保の改革の一環として、吉宗は隅田川のほか、飛鳥山(王子)、御殿山(品川)などに桜を植樹し、飲食店まで用意させて、花見を奨励しました。放火など治安の悪かったこの時代、庶民に花見という娯楽を与えることによって人の心を安定させようとしたともいわれます。

しかし、当時、植えられた桜はヤマザクラでした。現在の日本の桜の8割を占め、花見の主役となっているソメイヨシノは、幕末になって人工的に作られた新種のため、吉宗の時代には存在していなかったのです。

ソメイヨシノは日本だけではなく、ワシントンのポトマック川やニューヨークのハドソン川などを美しく彩っています。ソメイヨシノが海を渡ったのは、衆議院議員で東京市長も務めた尾崎行雄が、アメリカのタフト大統領夫人の願いに応えて1912(明治45)年に寄贈したためです。

前回までに紹介したように、日本のソメイヨシノも、米国のソメイヨシノも同じ遺伝子を持つ「クローン」です。人工交配による雑種のため、挿し木によってしか増やせないためです。一方、多様性がなく、環境の変化に適応しにくいという性質があります。

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