今日の女の気持ちより

女の気持ち:母のメール 埼玉県伊奈町・大嶋衣子(主婦・60歳)
毎日新聞 2012年10月13日 東京朝刊
「おはよう。今日もいい一日が始まります」。新潟に住む90歳の母から毎朝、届くメールの冒頭です。
信州から20歳でお嫁に来て、長年連れ添った父が入院しました。一人になった不安や寂しさを紛らわせるため、89歳の手習いでメールを始めました。趣味の短歌のために電子辞書を使っていたのが良かったのか、短い文から始めて、気づいたら、できるようになっていました。
高齢のため足腰が悪く、家から出ることができないのですが、心のアンテナを高く張って、自分の生活圏内から、次々と友達を見つけて、様子を伝えてくれます。
家の隅で鳴くコオロギの声、窓から見える風に揺れるコスモス、台所のテーブルで次々にピンクの花を咲かせるシクラメン、窓から見える雪や、夏空……。いろいろと想像しながら、対話しているのです。
年をとり、できないことが多くなる中でも決してあきらめず、自分にできることの中から、想像力を働かせて喜びを見つけています。ぐちを言わず、フロンティア精神で人に関わり、いつも感謝して生きています。
メールのおかげで深いコミュニケーションが取れました。母の知恵や哲学は、私の生きる道しるべになりそうです。
<母のメールから>
「今朝、曇り空。お化けの出そうな暗がりです。雨が降るぞと言っているみたいです。はて、どちらに軍配が上がるかな」
「今朝、空の雲。ほんのり赤く、雲の初恋かもしれないね」

女の気持ち:母のメール ~毎日新聞20121013~

「おはよう。今日もいい一日が始まります」。新潟に住む90歳の母から毎朝、届くメールの冒頭です。

信州から20歳でお嫁に来て、長年連れ添った父が入院しました。一人になった不安や寂しさを紛らわせるため、89歳の手習いでメールを始めました。趣味の短歌のために電子辞書を使っていたのが良かったのか、短い文から始めて、気づいたら、できるようになっていました。

高齢のため足腰が悪く、家から出ることができないのですが、心のアンテナを高く張って、自分の生活圏内から、次々と友達を見つけて、様子を伝えてくれます。

家の隅で鳴くコオロギの声、窓から見える風に揺れるコスモス、台所のテーブルで次々にピンクの花を咲かせるシクラメン、窓から見える雪や、夏空……。いろいろと想像しながら、対話しているのです。

年をとり、できないことが多くなる中でも決してあきらめず、自分にできることの中から、想像力を働かせて喜びを見つけています。ぐちを言わず、フロンティア精神で人に関わり、いつも感謝して生きています。

メールのおかげで深いコミュニケーションが取れました。母の知恵や哲学は、私の生きる道しるべになりそうです。

<母のメールから>

「今朝、曇り空。お化けの出そうな暗がりです。雨が降るぞと言っているみたいです。はて、どちらに軍配が上がるかな」

「今朝、空の雲。ほんのり赤く、雲の初恋かもしれないね」

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