男の気持ちと女の気持ち・・・毎日新聞紙面より

男の気持ち:つかず離れず 埼玉県富士見市・秋山孝昭(NPO役員・67歳)
毎日新聞 2012年11月19日 東京朝刊
毎日が「サンデー」になって1年がたった。多くのサラリーマンは定年後、夫婦水入らず、仲良く暮らしたい、と願っているそうだ。かく言う私も、そんなつもりでいた。しかし、現実はそんなに甘くはなかった。
まず、妻とは趣味が違う。行動をともにするのは、ウオーキングと、温泉旅行くらいだ。海外旅行は趣味の仲間と行くわ、でも、温泉の旅は車の運転ができないので頼むわ、と。まあ、それも良しとしよう。
次は昼食の問題だ。現役時代のお昼は正午と決まっていた私と違い、妻はその日の都合によって時間はまちまちだ。しかも、メニューをあらかじめ決めているわけでもないらしい。
今日は急がないの、おなかがすいたら、お先にどうぞときた。はて、さて、何を食べようか?
そこで作り方のレクチャーが始まった。ラーメン、チャーハンなど、何とか数品は作れるようになった。
その代わり、NPO活動や、ぼけ防止マージャン、健康登山など外に出かける時の手作り弁当を、妻に200円で請け負ってもらうことで合意した。現役の時は、弁当持参の習慣がなかったので新鮮だ。
この春、結婚40年を迎えた。今さら、新婚生活でもない。が、なぜか、男はいつまでも過去のロマンを夢みるのである。しかし、女は何があっても過去は振り返らないことを、ようやく悟った。
これからは「つかず離れず」、お互いを尊重し合って、生きていこうと心に決めた。
女の気持ち:快適な紙パンツ 愛媛県新居浜市・松木喜美子(主婦・80歳)
毎日新聞 2012年11月20日 大阪朝刊
子どもの頃から25歳くらいまで、下着は洗濯板とたらいを使って自分で洗っていた。下着は人目を避けて陰干しする。女性は、下着を見せないというのが当然のことだった。
今どきの子どもたちを見ていると、目をつむりたくなるような下着があふれている。私の孫たちもそうである。下着が恥じらいものではなくなったのだろう。
娘を産んだ時も、今とは違った。さらしのおしめをせっせと洗い、娘に排尿の感覚を覚えさせた。そして、できるだけ早くおむつ離れをするよう、しつけていた。
こういった自分の経験に照らし合わせると、孫の育児期に、紙おむつを使い捨てしていたことを私は快く思っていなかった。便利になったということなのだろうが、何ともそれが解せなかった。
この度、私は突然入院し、手術を受けることになった。私が絶対にしてほしくなかったことは、パンツを洗ってもらうことだった。娘にすら、そうしてもらいたくないと思っていた。
紙パンツを使ってみた。入院したとはいえ、私の生活の中で、紙パンツを使うということは想定外なのだったが……。
それが、それがである。紙パンツほど、いいものはないと思い始めた。案外、はき心地も快適である。
1カ月ほど入院し、この度、退院した。紙パンツは今も利用している。少なくとも自尊心は保たれている。時代と共に、私の考えも変わった。

男の気持ち:つかず離れず 毎日新聞 2012年11月19日 東京朝刊

毎日が「サンデー」になって1年がたった。多くのサラリーマンは定年後、夫婦水入らず、仲良く暮らしたい、と願っているそうだ。かく言う私も、そんなつもりでいた。しかし、現実はそんなに甘くはなかった。

まず、妻とは趣味が違う。行動をともにするのは、ウオーキングと、温泉旅行くらいだ。海外旅行は趣味の仲間と行くわ、でも、温泉の旅は車の運転ができないので頼むわ、と。まあ、それも良しとしよう。

次は昼食の問題だ。現役時代のお昼は正午と決まっていた私と違い、妻はその日の都合によって時間はまちまちだ。しかも、メニューをあらかじめ決めているわけでもないらしい。

今日は急がないの、おなかがすいたら、お先にどうぞときた。はて、さて、何を食べようか?

そこで作り方のレクチャーが始まった。ラーメン、チャーハンなど、何とか数品は作れるようになった。

その代わり、NPO活動や、ぼけ防止マージャン、健康登山など外に出かける時の手作り弁当を、妻に200円で請け負ってもらうことで合意した。現役の時は、弁当持参の習慣がなかったので新鮮だ。

この春、結婚40年を迎えた。今さら、新婚生活でもない。が、なぜか、男はいつまでも過去のロマンを夢みるのである。しかし、女は何があっても過去は振り返らないことを、ようやく悟った。

これからは「つかず離れず」、お互いを尊重し合って、生きていこうと心に決めた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

女の気持ち:快適な紙パンツ 毎日新聞 2012年11月20日 大阪朝刊

子どもの頃から25歳くらいまで、下着は洗濯板とたらいを使って自分で洗っていた。下着は人目を避けて陰干しする。女性は、下着を見せないというのが当然のことだった。

今どきの子どもたちを見ていると、目をつむりたくなるような下着があふれている。私の孫たちもそうである。下着が恥じらいものではなくなったのだろう。

娘を産んだ時も、今とは違った。さらしのおしめをせっせと洗い、娘に排尿の感覚を覚えさせた。そして、できるだけ早くおむつ離れをするよう、しつけていた。

こういった自分の経験に照らし合わせると、孫の育児期に、紙おむつを使い捨てしていたことを私は快く思っていなかった。便利になったということなのだろうが、何ともそれが解せなかった。

この度、私は突然入院し、手術を受けることになった。私が絶対にしてほしくなかったことは、パンツを洗ってもらうことだった。娘にすら、そうしてもらいたくないと思っていた。

紙パンツを使ってみた。入院したとはいえ、私の生活の中で、紙パンツを使うということは想定外なのだったが……。

それが、それがである。紙パンツほど、いいものはないと思い始めた。案外、はき心地も快適である。

1カ月ほど入院し、この度、退院した。紙パンツは今も利用している。少なくとも自尊心は保たれている。時代と共に、私の考えも変わった。

Tags:

Leave a Reply