常陽新聞、タブロイド紙で再スタート

毎日新聞20131215

常陽新聞、タブロイド紙で再スタート 苦境に活路、記者魂に期待 毎日新聞 20131215

8月30日、常陽新聞廃刊の記者会見に行くと、直前まで精力的に取材していた常陽記者が社屋2階会議室に案内してくれた。冷房はなく、全開の窓から真夏の熱風が吹き込む。「従業員は解雇するのか」「実売部数は何部だったのか」などと各社記者から質問が飛んだ。悲痛な面持ちで答えていく関野一郎社長(58)は「給与遅配など無理をさせてしまった社員に申し訳ない」と頭を下げた。私は常陽記者から経営上の愚痴は聞いたことがなかった。

同紙を発行する常陽新聞新社(本社・土浦市真鍋2)は2003年に旧社を清算したものの、08年には地元銀行が数億円の融資を債権放棄。新規融資がストップするなど、経営危機はうわさされてきた。しかし、「65年の歴史に幕を引くのは断腸の思い」と語る関野社長の言葉を実際に聞くと、各社記者に衝撃が走ったのも事実だ。1948年、「豆日刊土浦」として創刊。“紙齢”は2万2885号を刻み続け、県南地域を中心に存在感を示していたからだ。

9月2日、土浦市長の定例記者会見に常陽記者の姿はなかった。「停滞する土浦経済が廃刊に影響しているのでは?」と問うと、中川清市長は「土浦の商業が落ちたとは思わない。郊外に大手企業が進出すると、地元紙に出す広告がなくなる」と“コンパクトシティー”を目指す考えを示した。イトーヨーカ堂が昨年、JR土浦駅前から撤退表明。常陽新聞は広告収入が急減し、破産の要因になった。行政の支援は民間の商取引のスピードには追いつかない。

今月13日、都内コンサルティング会社が100%出資する「常陽新聞株式会社」(本社・つくば市吾妻3)が週6日発行のタブロイド紙「常陽新聞」を新創刊すると発表した。社員約20人のうち、半数を記者として採用。希望した元社員は原則として雇用するという。IT企業出身の楜沢悟社長(42)は「日刊紙の情報は信頼感があり、やり方によって経営の活路が見いだせる。8カ月分の給料未払いでも記者を続けてきた元常陽従業員を私は買っている」。私も常陽記者の新聞記者魂に期待したい。

Tags:

Leave a Reply