女の気持ち 苦学生 毎日新聞 20140406
高校を卒業し、4月から東京の大学に通う息子の引っ越しを終えた。4年間、親戚の家に間借りさせてもらうことになった。ラッキーである。
母子家庭の我が家には、東京で1人暮らしさせる余裕などない。義理の姉が、「下宿先に」と申し出てくれて本当にありがたい。
進路を東京の大学に決めた時、私に反対されると思ったのだろう。息子は、「この勉強がしたいからこの大学に行きたい。授業料は、奨学金を借りて自分で返すから行かせてほしい」と、緊張の面持ちで私に訴えた。
私に反対する理由などない。むしろ、こんな純粋な大学生は今時珍しい。高い志が持てて幸せな人だな、と思った。
彼は私には何も言わずに、受験料の支払いを済ませていた。びっくりして後で聞いたら、お年玉と毎月のお小遣いを少しずつためていたとのことだった。
さて、息子がいなくなってまだ1週間足らず。優しい子だから、下宿先の一家にもきっと愛されるだろう。
私は? 子供が旅立ったのだ。これを喜ばずしてどうする? そうわかってはいても、「いつも僕たちのために働いてくれてありがとう」と、時折肩を抱いてくれた彼はもういない。心にぽっかりと開いた穴をただ見つめている。情けない。
私と同じ思いをしている母親が全国にどれだけいるだろう。
皆さん、子供という宝物と一緒に過ごせた日々に感謝し、今しばらくはこの切ない気持ちを存分に味わうとしましょうか。
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