産経新聞 20140810
納豆菌でエコな洗剤 石油原料「洗う成分」激減、コストも抑え
洗剤やシャンプーなどに添加される石油由来の界面活性剤の使用量を納豆菌の作る物質で
劇的に減らせることが9日までにわかった。
茨城県つくば市の産業技術総合研究所(産総研)などが発見した。
すでに量産化にも成功しており、これによって環境負荷を低減したり、原油市場が高止まりするなか、
コスト削減効果などによる企業の国際競争力の強化も期待される。
界面活性剤は、洗剤などに含まれる「洗う」成分として知られる。
台所用洗剤やシャンプー、化粧品のほか、機械、建築、土木分野など幅広く使用されており、
プラスチックと並ぶ石油製品でもある。
ただ、石油を原料とする界面活性剤は水質などを通して生態系へ悪影響を及ぼすなどとして、
環境面での問題点も指摘されている。
研究では、界面活性剤に納豆菌からできた7つのアミノ酸が環状につながった
「サーファクチン」と呼ばれるペプチドを加えて、その洗浄効果を調べた。
この結果、界面活性剤の量を100分の1に減らしても、その効果が変わらないという結果が出た。
産総研の井村知弘主任研究員は「環境面に加えて、製品設計の自由度が上がる」と説明するほか、
同研究所では「界面活性剤の量を減らせる分、
抗菌機能だけの洗剤に香りの持続といった機能を加えることも可能になる」としている。
さらに皮膚など人体への刺激が少ない商品開発も可能になるという。
今回、産総研と共同研究を行った化学メーカーのカネカは、すでに皮膚への刺激が少ない点に着目して、
化粧品向けにはこの物質を量産済みで、今後は「機械の洗浄用といった
工業用洗剤などへの用途展開も可能になった」としている。
さらに、企業にとっては高止まりする原油価格がコスト要因となっているほか、
原油市場の価格変動リスクが経営戦略を立てにくくしている側面もある。
このため、石油の使用を劇的に減らすことのできる今回の発見は、
企業の“石油リスク”を軽減して競争力を高める可能性もある。
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