余録 秋は食欲の季節である。毎日新聞余禄 20140923
秋は食欲の季節である。露店の焼きそば屋でマツコ・デラックスさんが
「それのどこが大盛りなのよ」と抗議するCMがある。
「それならこっちにしなさいよ」というナレーションとともに
「超大盛り」のカップ焼きそばが大写しになる。
大皿に山盛りのナポリタン、麺にのせた野菜炒めや焼き豚が器から
あふれそうなラーメンなど特大の盛り付けで知られる飲食店が、
雑誌やテレビで特集される。なにやら「大盛り」を超える「超大盛り」が人気のようだ。
そんな流行は人ごとと思っていたが、そうとも言えない。
昼食に入ったそば屋のメニューに「国産そば粉だけを使っています」とただし書きがあった。
喜んでざるそばの大盛りを頼んだが、期待は落胆に変わった。
量が足りないのだ。「どこが大盛りなのよ」というせりふが頭をよぎったしかし。
国産のそば粉はそれだけ貴重で高価なのだろう。
当然「超大盛り」のメニューはない。
「それなら中国産にしなさいよ」という声が聞こえてきそうだ。
日本蕎麦協会によるとそば粉の自給率は約3割で輸入品の大半は中国産だ。
天ぷらそばになると海外依存度は一段と高まる。
衣になる小麦粉やエビの自給率は輪をかけて低いからだ。
日本の食料自給率(カロリーベース)は39%しかない。
それなのに毎年800万トン近くの食品が無駄に捨てられている。
コメの生産量に匹敵する量だ。
今日は秋分の日。
彼岸の中日にあたり、農作物の収穫期とも重なる。
先祖の霊に手を合わせるとともに自然の恵みに感謝し、
食生活の無駄を省みる日にしたい。
ずっと「超大盛り」を食べられるとは限らないのだ。
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