地域の元気:千葉・船橋 時活村 「仕事人間」脱出の場に
毎日新聞 2015年08月07日
千葉県船橋市の民間ボランティア団体「船橋市時活(じかつ)村」は、定年後のサラリーマンが抱える“自遊時間”のため、活動する場を設けて20年になる。村「助役」の星量男(かずお)さん(76)は「家でごろごろするしかなくなった『仕事人間』に心地よい居場所を提供し続けたい」と話す。
60歳で定年後、80歳まで元気だとして生まれる余暇は10万時間あります。「どう頑張らないで、弾んで生きていくか」を考え、1995年に代表の杉本晴夫村長らが結成しました。きっかけは、いかにも話し相手がいなさそうな高齢男性が、明るいうちから飲食店で一人酒を飲んでいるのを見て「居場所をつくってあげよう」と思い立ったからだそうです。私は2002年に入村し、現在、「村民」は340人います。
一人が一つの活動を見つけようという意味の「一人一活」に取り組んでいます。料理や句会、農園など、35の一活があり、それぞれの「世話人」が毎月のように開催しています。サークル活動と違って、一つだけ継続して学ぼうという内容ではなく、外部の指導者なども呼びません。予定表を見て、村民がその時にやってみたい活動に参加を申し込み、他の村民と一緒に楽しみます。あくまで仲間づくりが主眼で、一活が終わった後に「反省会(懇親会)」を開くことが多く、村としても定期的に忘年会などの飲み会を企画しています。サラリーマンは飲まないと友達ができないのが習性だから……。会社から地域社会へのソフトランディングを目指しています。
まず、現役時代のことを聞かない、話さないのがルールで、初めて参加する人のあいさつも、住所と名前だけと決めています。余計な情報が入ると、縦の関係が生まれるからです。もちろん政治、宗教、商売は持ち込まない。対等な横社会なので「村」です。
一活の参加費は300円に実費が基本です。これに「村民税」(年会費)5000円と、村民になるときの「入村料」1万円で運営しています。一昨年にNPO法人の登記をしましたが、行政から補助金などはもらっていません。最高決定機関は「村長」「助役」「収入役」ら13人が出席して毎月開会する「村議会」です。全て、完全ボランティアでやっています。
活動を大きく広げていくつもりはありません。参加者が毎日元気に過ごせていることについては「社会に貢献している」という自負心を持っています。これからも長く、この役割を果たしていけたらと思っています。
少子高齢社会の健康寿命に貢献
総務省の人口推計で今年初めて65歳以上が14歳以下の2倍超となったことが明らかになった。深刻化する少子高齢社会で、大切なのが健康寿命(日常生活に制限のない期間)をいかに延ばすかだと言われている。高齢者が元気でいることで、医療・福祉関係の公的出費が抑えられるからだ。時活村の活動は、そうした意味で社会への貢献は大きい。2003年度、内閣府の社会参加章を受章した。
活動の中心の「一活」の名前はユニークだ。写真を撮る「ピンぼけ」や寄席の後に居酒屋へ行く「笑っていい友」、スポーツ吹き矢に取り組む「ホラ・吹き矢」、マージャンをする「頭の体操」など。毎月15程度の一活に参加する村民もいるという。
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