退職後が大変
毎日新聞2015年12月26日
退職後1年余が経過した。退職後の生活は、自由な時間を好きなことに使え、楽しいものと期待していた。しかし、ありあまる時間を充実したものにして過ごすことがいかに大変かを思い知らされることとなった。
家のことに関しては、ゴミ出し、食後の後片付けなどを率先して行っているが、妻には妻の流儀があり、こちらは「やってやっている」感があるので、妻から感謝されるには程遠い。表面的には、お互いの我慢でなんとかなっているように思う。妻との距離感を良好に保つには、それなりの努力が求められる。
もちろん、家の中にばかりこもっていてはと思い、外での時間を費やすべく、図書館やさまざまな教室に通うことにしたが、本を読んでいても、スポーツジムで汗を流していても、平日の昼間からこんなところにいていいのかとの思いばかりが先立ち、充実感など程遠く、とにかく落ち着かない。
仕事がないという空虚感ばかりに支配されている自分に気付かされる。同年配の者に思いを聞いてみても、「退職後5年たつが、いまだに落ち着かない」と同様の意見だ。
いずれ病に倒れ死を迎えることになるが、それまでの間、少しでも悔いのない人生を送りたいと思いながら、現実には、もんもんと日々を過ごしている人のなんと多いことか。仕事が抜けた穴を埋めるものを見つけ、それによって充実した日々を送ることは至難のことであると改めて感じている。退職後の方が、大変なのである。
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