茨城新聞 20160226 いばらき春秋
「赴任地に惚(ほ)れろ」。県を担当していたころ、記者クラブとの懇親会で橋本昌知事がよく言った。
どちらかというと、県外出身者に茨城を好きになってほしいという期待からくるものだったと思うが、茨城で生まれ育った自分も賛同できた。
先日、桜川市真壁のひなまつりを見て歩いた。昨年に続き2度目。
リピーターだ。
ひな人形、歴史的建造物、街並み…魅力はあまたあれど、やはり一番は人情、温かさだろう。
十数年前、駆け出し記者のころにこのまちを担当した後輩らと、まちの呉服屋さんで、本屋さんや役所の人も加わって、今どき量り売りされている地酒を飲みながらよもやま話に花を咲かせた。
後輩はこのまちを愛し、まちの人たちに愛された。
それがわが事のようにうれしく思えた。
自分たちは、ひなまつりを楽しむのと同時に、まつりを一生懸命盛り上げようと頑張る人たちに会いにきたのだ。
その真壁の人たちに、かつて自分が赴任したまちの懐かしい顔を重ねた。
その夜は、登録有形文化財の旅館で気持ちよく眠った。
自分も赴任地に惚れた。
そして今もずっと惚れている。
自信を持って言える。
赴任地の女性にはふられてばかりだったが。
真壁 風の祭り 2010.05.29