男の気持ち 一生の宝物

男の気持ち 一生の宝物 

毎日新聞2017年4月29日 

 43年間連れ添った妻の百日葬が終わりました。30年もの長い間新聞配達をして、大雨でも大雪でも強風が吹いても、一日として休みを取ることがない頑張り屋さんでした。

 ある時は二つの仕事を掛け持ちしていました。それというのも、一軒家のマイホームを持ちたいという夢があったからでしょう。しかしその夢はかなうことはありませんでした。

 化粧は控えめで、洋服も何一つ高価なものはありませんでした。そのようにしてコツコツためたお金ですが、心根が優しく、また人を疑うことを良しとしないので、知人から申し入れがあれば帰って来ないだろうお金でも用立てていました。他にもいろいろな事があるたびに、手元からお金が消えていき幾ばくかの額しか残りませんでした。

 私の甲斐性(かいしょう)なしのせいで苦労ばかりかけました。参列者とお別れする時、今まであまり話をする機会のなかった義弟から、妻を苦労させたことを知ってか知らずか「姉さんはあなたと結婚して正解でした。ありがとう」と言ってくれました。この励ましの言葉こそ、今の私にとって一生の宝物です。

 まだ涙と鼻水でグチャグチャみっともない顔をしていますが、一日も早く立ち直らなければ、と思う今日このごろです。

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