女の気持ち
コンプレックス
毎日新聞2018年2月13日
母は私を産んだ時、娘の誕生を喜びながらも、顔立ちを見て将来をかなり案じたようだ。
毎日おでこを軽く押したり鼻をつまんだりしたという。
「心配しなくても、時が来ればきれいになる」と祖母は慰めたらしいが、現実は母の予想通りだった。
しかも思春期になると顔中にニキビができ、体形もやや太めとあって事態は絶望的。もてようはずはなく、ふくれあがるコンプレックスを持て余す毎日だった。悲観する私に母は「それだけあれば上等。それにあなたはがんばるし、あきらめないところがいい」と、私のことをほめてくれた。
そう言われると不思議に「ま、いいか」「またやっていこう」という気になったものである。あの時期を乗り越えられたのは母の励ましのお陰だと思う。
幸い、学生時代に知り合った夫と結婚し、2人の子に恵まれた。また仕事を通してたくさんの人に出会った。一生懸命仕事をすると、周囲は私を認めたり頼りにしたりしてくれることがわかった。
いつの間にか自己肯定感が生まれ、大きなコンプレックスの塊は小さくなっていった気がする。
2年前、友人たちと誘い合わせ、数十年ぶりに中学と高校の二つの同窓会に出席した。かつての男子たちから「前よりキレイじゃん」と言われた。年相応に老けているのに、若い時よりましと言われ、「私だからかなあ」とおかしかったが、なんだかうれしかった。
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