子ども食堂

余録 困っている人ほど助けを求めないことがある…
毎日新聞 2019年7月1日

困っている人ほど助けを求めないことがある。どうしていいかわからず、どこに何を求めたらいいかわからないからだ。それでも空腹にはなる。大正時代、米騒動につながる米価高騰が起きると、「公営食堂」「簡易食堂」が各地で開設された。

困窮者の救済のために自治体などが運営する食堂のことだ。少しのお金で山盛りのご飯を食べることができたため、労働者や学生らも列をなしたという。

今の時代は「子ども食堂」だ。スマホは持っていても、まともな食事が学校の給食だけ、風呂にもまともに入れないという子どもがいる。見えにくい「貧困」の中で、それが普通だと思っている子どもらを救おうと始まった民間のボランティア事業である。

その「子ども食堂」が全国で少なくとも3718カ所になったと、NPO法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」が先月発表した。前年の1・6倍という急増ぶりだ。空き家を活用してほしい人、社会貢献をしたい企業なども運営に乗り出している。

小学校区ごとの「充足率」では、沖縄60・5%に対して秋田5・5%など地域間格差が大きい。滋賀県は「子どもが歩いて行ける範囲に一つ以上」を目指し計300カ所の数値目標を掲げている。

独居の高齢者や仕事帰りの人が立ち寄る姿も最近は見られる。貧困家庭の子どものためだけでなく、地域の交流拠点として進化している。ひきこもり、虐待、依存症など、さまざまな困難を抱えた人々が集う「食堂」になってほしい。

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