サクラの話題

サクラの品種識別可能に―森林総研  ~常用新聞20110309~

遺伝子情報利用、国内で初めて開発

森林総合研究所(つくば市松の里)は8日、遺伝子情報を利用したサクラ栽培品種の網羅的な識別技術を、国内で初めて開発したと発表した。これまでは花や葉などの外部形態の観察だけでは、正確な識別が困難だった。この技術開発で、花のない季節や苗木状態での識別も可能になった。 

サクラは室町時代から品種改良が行われ、接木による遺伝子がすべて同じ個体同士のクローン増殖で保存されてきた。しかし、長い間には取り違えなども起こり、形態が同じものが別の名前で呼ばれているなど品種区分が疑われる例もあったという。

今回、森林総研と住友林業が共同開発した20個のDNAマーカーを使用。DNAマーカーによる識別方法は、樹木の一部の組織からでも検査が可能だ。この方法により、森林総研多摩森林科学園(東京都八王子市)や国立遺伝学研究所(静岡県三島市)、新宿御苑(東京都新宿区)の3施設にあるサクラ計1850本を調査した。

この結果、栽培系統としては300以上のクローンが識別された。これまで単一クローンが通説になっていた栽培品種のソメイヨシノは、各地から収集されたものが同一のクローンであるのが確認された。

また、シダレザクラの栽培品種の中には、多くのクローンが含まれていることが分かった。さらにこれまでエドやイトククリ、オオテマリなど異なる名前で呼ばれていたものが、同一クローンだったことも判明した。

森林総研では今後、全国の栽培品種の遺伝的識別データを積み重ね、すべての品種の同定や由来を明らかにする方針だ。

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