憂楽帳 不確かな基準

憂楽帳 不確かな基準 毎日新聞 20140411夕刊

「基準って、意味ないですよね」

東日本大震災で福島県郡山市から東京都内に自主避難中の女性(50)が先月、震災3年を前にこぼしていた。

原発近くで暮らし続けた時の健康への影響は、国がどんな基準を示そうと、それを信じる人と信じない人がいる。

「結局は、個人の考え方。だから避難者同士でも話題にしにくいんです」

原爆症の認定問題を連想する。広島、長崎で浴びた放射線の量が国の認定基準で

「問題なし」とされた人も、高齢になってがんなどを発症する。

その中には被ばくとの因果関係がないケースもあるだろうが、否定するのは被爆者の人生から目を背けた気がしてならない。

担当記者だった時は「基準を改めて健康影響を幅広く認めるべきだ」との内容の記事を何本も書いた。

だが、これを福島の未来に当てはめると、住む人の不安を一層あおる結果になりかねない。

確実な「基準」をたぶん誰も示せない中、どうすれば安心につながる情報を伝えられるのか。

そのつど立ち止まり、悩みながら報道するしかない。

 

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