女の気持ち:支えられて 毎日新聞 20150518
大型連休の5月2日、標高599メートルの高尾山の頂上に立ち、富士山を眺める自分に一番驚いたのは私自身かもしれません。
この日の朝、「お母さん、高尾山に登ろう。体調に合わせて行けるところまででいいから」。息子にそう言われた時は「無理、無理、無理よ」といったんは提案を却下しました。
元来、出無精なうえに目を患ってからは縁石や段差につまずいて転んだり、電信柱や塀にぶつかったりすることもたびたびです。歩くことを楽しむより外出がおっくうになるばかりでした。
そんな私を心配する息子の気持ちが分かるだけに、行ってみようかと一大決心をしました。「もう少し左へ寄って。大きな段差があるからいつもの2倍ぐらい高く足を上げて。木の根っこがいっぱいあるからね」。息子のナビゲーターのおかげで、息切れしながらも頂上に登り、富士山を眺められました。この感動は忘れられません。
「本当に来て良かった。まだまだ歩ける。まだ見ることができる」。そう気づかせてくれた息子に感謝です。ありがとう。
草花も木も支えがあれば嵐にも倒れません。人間も同じです。一人では弱いかもしれないが、強き支えがあれば、揺るがず、倒れずまっすぐ成長して人生を生き抜くことができます。
私も支えられるばかりでなく、人を励まし支えられるよう強く生きたい。書くことも大変ですが、ひと文字でもこの思いを書きたくて……。
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