常陽新聞 2015年08月26日
国の地方創生交付金を活用して、取手市が地方版の新たな自律型創業支援事業を計画している。地元の商店や企業などがまちぐるみで起業家を応援する仕組みをつくろうという構想で、東京や大阪で創業支援事業を展開し実績を上げている「あきない総合研究所」(東京本社・港区、吉田雅紀社長)が提唱し、2014年度の中小企業白書でも紹介された。同研究所と協働で全国で初めて、取手で新しいアイデアを実現させようという試みだ。
国に申請、10月始動
今月20日、市が国に計画を申請。8月31日開会の9月議会に、一般会計補正予算として創業支援事業補助金約4650万円を提案する。国に認められれば、同研究所が市内に創業支援の特定目的会社を立ち上げ、10月から始動する。
特定目的会社は、駅前などに起業家を支援する貸しオフィスを開設するほか、起業家向けのセミナーを開いたり、創業や資金繰り、経営などの相談に応じたり、起業支援情報を提供などする。
貸しオフィスは、コワーキングスペースと呼ばれる個室の事務所と共有の会議室や打ち合わせ場所などを備えた事務所で、机一つだけを貸し出したり、1日数時間だけ貸すなどもするという。
ウインウインを構築
同研究所など創業支援会社は、すでに東京や大阪など都市部でこれらの支援事業を展開し実績を上げている。取手ではこれらに加え地方版として新たに、地域全体で起業家を応援する仕組みをつくろうというのが大きな目玉だ。
具体的には、起業家や起業を考えている人などを特定目的会社が認定し、「起業家カード」や「起業家クーポン」を発行。応援団となる商店や企業でカードなどを提示すれば、例えば、市内で新会社の印鑑を作る際、割り引きで作ることができたり、居酒屋で商談する際、ビールを安く飲めるようにするなど、多くの地元商店や企業に応援してもらうことで起業しやすい環境をつくろうという試みだ。
応援団となる地元の商店や企業にとっては、将来の取り引き相手にもなることから先行投資の意味合いを持つ。双方ともうまくいく「ウインウイン」の関係を地域社会につくることが地方版の創業支援のみそだという。
芸術家支援も検討
ほかにビジネスコンテストを開いて、優勝した起業家にチャレンジショップを開いてもらったり、小中学校や高校、大学などでの起業家教育なども検討されている。
市内には東京芸大取手キャンパスが立地し、卒業後も市内で芸術活動を続ける現代芸術家も多いことから、作品制作やPRなどを支援し、芸術家兼起業家にもなってもらうメニューも計画にあるという。
創業を支援する特定目的会社に対しては、市が3年間支援し、その後は自立してもらう方針だ。
◆地方版のモデルに
市産業振興課によると、昨年10月、市職員が同研究所を訪ね、市内での創業支援を依頼したことがきっかけという。当時は断わられたが、国が地方に職場や雇用を創出する地方創生の支援政策が具体化する中、今度は同研究所側から市に提案があったという。
同課は「起業家が起業しやすい環境をつくり、地方の企業支援モデルとしたい」としている。