ひろくんを救う会

【いばらき春秋】

分娩(ぶんべん)室前の長椅子で身を固くし、生まれてくるわが子の無事を祈った。年齢が上がるにつれ勉強やスポーツの成績に一喜一憂するが、子どもが病気になると、やはり健康が一番とわれに返る
土浦市の稲本啓(ひろ)ちゃん(2)は生後すぐ、心臓の難病「拡張型心筋症」と診断された。昨夏に病状が悪化し補助人工心臓を装着したが、助かる道は移植しかない
1997年に臓器移植法が制定され20年。国内の移植件数は年間300件以上に増え、脳死判定も法施行後441例を数える。2010年の法改正で15歳未満の脳死での臓器提供が可能になった
しかし、子どもからの提供は現実、極めて少ない。識者は臓器移植への理解が十分進んでいないと指摘する。確かに、わが子がもし脳死と宣告されたら、「人の死」と受け入れられるか、悲嘆の中で臓器提供を決断できるか、自信がない
啓ちゃんの両親は米国での移植を決意し、コロンビア大病院での受け入れが決まった。手術代や渡航費など計約3億1千万円。友人らは「ひろくんを救う会」を結成し、昨年暮れから募金活動を始めた。現在1億6千万円余が集まり、ようやく5合目
小さな命は今も闘っている。支援の輪が全国津々浦々へ広がりますように。

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