未来へのメッセージ

10年前の自分から手紙届く 未来へのメッセージに感激 茨城県取手市

産経新聞 20200824

茨城県取手市が10年前の市制施行40周年事業の一つとして、同市ゆかりの戦国武将、本多作左衛門にちなんで募集した、10年後の自分や家族に宛てた手紙「未来へのメッセージ」が市内外に届けられた。受け取った人たちは10年前を思い出し、「久しぶりにうれしいひと時。一回だけで終わらせず、形を変えてでも、今後も多くの人に味わってもらいたい」と感激していた。(篠崎理)

本多作左衛門は「一筆啓上、火の用心、お仙泣かすな馬肥やせ」という日本一短い手紙を書いたことで知られる。徳川家康の家臣で晩年を取手市で過ごした。市内にある墓は県指定文化財になっている。

市は、本多作左衛門にちなみ、平成22年の市制施行40周年記念事業の一環で、「10年後の自分や家族宛てに手紙を書き、2020年の7月23日(ふみ月ふみの日)に発送する」と半年間、市民を対象に募集した。

これに対し封書582通、はがき300通の計882通の応募があり、市は予定通り今年の7月23日に市内外に発送した。

同市寺田の絵手紙講師、富沢恒子さん(77)は手書きの絵手紙の会の合同展のチラシや7年前に亡くなった夫や自分宛てのはがきなどが5通届いた。富沢さんは「書いた記憶はあったが、こんなにたくさん出したことは忘れていた。10月8日の私たちの結婚記念日に書いたのかもしれない。やさしかった夫のことを思い出した」と感慨深げだ。

中学2年生の時に「将来は獣医になりたい」と書いた、自分宛ての手紙を受け取った同市上萱場の市総務課勤務、下山有加さん(24)は「手紙を書いたことも忘れていた。母から(手紙が届いたという)連絡を受けてびっくりした」と話す。

 

下山さんは「将来の夢や家族旅行のことが書いてあり懐かしかった。進路は変わったが、当時もその後も一生懸命だったことを思い出した」と振り返る。

市には、このほかにも「心温まる企画をありがとう」「新型コロナ騒ぎで気持ちが晴れない中、久しぶりに明るい話題だ」などの感謝やお礼の電話や手紙が届いたという。

富沢さんは「今の若い人はメールなどで用事を済ませてしまうが、この感激は手紙でないと味わえない。取手を手紙や絵手紙のまちにしたい」と夢を広げる。

下山さんも「過去の自分からの手紙はうれしくてドキドキした。こんな体験は自分だけでなく、これからもみんなに味わってほしい」と話している。

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