女の気持ち

さくらとの16年 茨城県取手市・下村圭子
毎日新聞 20200831

16年前、拾ったばかりの子猫が5日で亡くなったことを本欄に投稿し、掲載された。悩んだ末に家族に迎えたばかりの急死で心が折れたが、また命を受け入れて育てようと決意した話だった。

栄養失調で目に障害があったその猫を病院に連れていったとき、出産間近で捨てられて獣医に拾われた黒猫が病院にいた。黒猫は自分の子と同じようにうちの子をなめてくれた。うちの子はすぐに亡くなったが、私たち家族は「あの優しい黒猫の子どもを引き取りたい」と申し出た。胸に白いワンポイントのある元気な黒い子猫・さくらは、こうして我が家の娘になった。

とても賢くて、優しく気高い子だった。いつも家族の中心にいて、静かに家族を見守ってくれていた。16歳の誕生日を迎えた今月に入って、ご飯が食べられなくなり水ばかり飲むようになった。生まれた病院に通い、注射して点滴をした。今朝、診察台に乗せられたときには、もう息も絶え絶えで体温も下がっていた。あっという間のお別れだった。16年間の思い出が込み上げ、声をあげて泣いた。

さくらは幸せだったのかな。私たちはめちゃくちゃ幸せだった。生まれてきてくれて、うちに来てくれてありがとう。命の大切さ、いとおしさ、家族の絆。いろんなものをたくさん教えてくれた。

生まれ変わったらまたうちにおいで。待っているから。

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