87歳のメール

2月12日 毎日新聞女の気持ち~

昨年、新潟の実家に帰った折、携帯電話から家族にメールしている私を見て、87歳の母が、「若い人がやっているメールって、どんなふうにやるんだろう」と話しかけてきた。母の顔を見ると、真剣にやってみたいと言っているようだった。

 94歳の父が施設に入所し、母は数カ月前から1人暮らしになっていた。4人の子どもは遠方に住み、父の看病をずっとしていた母の心にぽっかりと穴が開いた気持ちになったと思う。

 娘や息子に電話したくても、仕事や家族がいると思うと長電話もできない。遠慮しがちな母にとって、メールは時間や場所を超えられるコミュニケーションの道具に見えたに違いない。

 私は、母の隣に座って、必死に教えた。文字の打ち方、送受信の仕方。文字の打ち方はすぐに覚えたが、送受信は難しかったようだ。操作の簡単な携帯電話を購入し、受信の仕方を覚えてもらった。

 他の兄弟たちは喜んで、毎日のように母にメールを送った。そして帰省のたびに、送信の仕方を教えた。3カ月後、「メールありがとう」と送信できるようになった。

 メールをしたいという気持ちがあれば年齢は関係ないのだ。1年たった今は、携帯を肌身離さず持ち歩き、毎日のようにメールを送っている。漢字の変換も覚えた。

 携帯メールは家族のきずなも深め、母を元気にさせている。いくつになっても向上心を持ち続けることが大切だと痛感している。

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