県産タケノコ給食に 竹林整備で〝一石二鳥〟 5茨城新聞5/18(火)
県やJA食品加工会社 伐採材を堆肥化、農家に配布
食の安全や地産地消の観点から県産タケノコを学校給食に提供しようと、県や県学校給食会、JA全農県本部などが商品を開発した。鉾田市内の食品加工会社「磯山商事」(磯山広行社長)が同市周辺の荒れた竹林の整備に乗り出し、収穫したタケノコを給食用商品に加工。今月から小中学校の給食で使われ始めた。竹林の整備で伐採した竹は堆肥(たいひ)に変えて地域で再利用する考え。関係者らは「子どもたちに県産品を届けるだけでなく、県内の竹やぶがタケノコ産地に生まれ変わればいい」と広がりを期待している。(報道部・平野有紀)
■輸入品使用できず
昨年度、県学校給食会や県、JA全農県本部などは、文科省の委託事業を受けて地場産農産物を使った商品開発に着手。輸入に頼っていたタケノコが中国製ギョーザ中毒事件以来使えず、県産タケノコを求める声が学校現場から上がっていた。
今年2月、県学校給食会で開かれた学校給食用新商品の検討会。県産タケノコの水煮が並んだ。参加した小学校の栄養教諭は「ほかの国産品は高くて使えなかった。県産品を早く使いたい」と顔をほころばせた。
課題は原料の確保だった。JA全農県本部の米川元康直販課長は「県内を見渡せば竹林はあるが、農家の高齢化も重なって掘る人がおらず、供給体制が整っていなかった」と話す。
■竹やぶから竹林へ
竹林はあっても管理されず、竹や雑草が生い茂り荒れた場所が多い。そこで、磯山商事が地主から竹林を借り受け、タケノコ収穫まで手掛けることにした。
重機で整備し、伐採や間引きも行う。「整備は容易じゃないが、竹やぶを竹林に戻したかった」と磯山社長。タケノコ生産で有名な福岡県を訪れ、タケノコの生産を一から学んだ。
今年は、鉾田市を中心に計10㌶ほどの竹林を借り受けた。4月中旬から手作業でタケノコを収穫し、商品化している。
■日本一産地目指す
伐採した竹は粉砕機で砕かれ、大量の堆肥に変わる。整備した竹林にまくほか、近隣農家に配布し地域で循環させる。大規模な堆肥盤を作り、多くの農家に分けたい考えだ。
竹の堆肥でイチゴを作るという同市の農家の男性(75)は「『地元の宝』を掘り起こすいいアイデア。環境にはいいし景観も良くなって、不法投棄や不審火などの心配もなくなる」と歓迎する。
県などによると、県内でタケノコを生産する農家は数戸ほど。産地として成り立っているとはいえない。「給食に使うにはまだ量が足りない」(米川課長)のが現状だ。磯山社長は「今後は子どもたちを招きタケノコ掘り体験も企画したい。竹やぶの整備を進めれば、茨城も日本一の産地になれる」と話している。