福島第1原発:汚染土、寺へ 「身捨てるのは僧侶の務め」 ~毎日新聞20110727~
放射能汚染を心配する住民から引き取った土壌を、寺の敷地に積み上げる常円寺の阿部光裕住職=福島市で、手塚耕一郎撮影 東京電力福島第1原発事故で、自宅や田畑の土壌の放射能汚染に不安を感じる住民が削り取った表土を引き受けている住職がいる。個人の「汚染土」について、国や自治体の対策の遅れに悩む住民は多い。「今ここに脅威があるのに放ってはおけない。身を捨て、困難を引き受けるのが僧侶の務め」と近隣住民に手を差し伸べている。
阿部光裕(こうゆう)さん(47)が住職を務める常円寺(福島市)。寺が所有する小高い山の上に、残土の詰まったゴミ袋が約160袋積み上げられている。阿部さんの線量計は毎時8マイクロシーベルト前後で推移しているが、「元の表土より、運び込まれる土の方が線量は低い」と笑い飛ばす。
「江戸時代までの寺は、現在の自治体と同様の働きをしていた」と語る阿部さん。5月末に放射性物質の除去に効果があるとされるヒマワリの種や苗を無償で配る市民団体を結成。年度内に2000万本を配り、放射性物質を吸い込んだ花や茎も寺で預かる計画を立てている。
土や花の受け入れについて、近隣住民に計画を説明して回った際に反対意見は出なかったという。作業には近隣住民や檀家(だんか)など約100人のボランティアと旧知の地元企業が携わっている。「たかだか一寺の住職でも、信頼関係があればこれだけの行動に移せる。政府の対策が遅々として進まないのは国民との信頼関係が壊れている証拠だ」
震災後も寺には、早朝から深刻な表情で悩み事を語る人がやってくる。「みんなの笑顔を取り戻したいだけなんだ」。そう話し、口を真一文字に結んだ。
印象に残った記事でした^ ^*
世界に広がる放射能 ~常陽新聞20110723~
北半球を既に5周か、高エネ研と環境研が調査
東京電力の福島第1原子力発電所の事故で、3月に放出された放射性物資がジェット気流や大気循環の影響で既に北半球を5周するなど世界中に広がった可能性が高いことが22日までに分かった。
高エネルギー加速器研究機構(高エネ研、つくば市大穂)と国立環境研究所(同市小野川)が測定した。
1986年の旧ソ連のチェルノブイリ原発事故同様、今回の事故の影響が地球規模の問題となったことを裏付ける結果といえそうだ。
九州大と東京大の研究チームは6月22日、3月12~16日に大気中に大量に放出された放射性物質が、上空の強い偏西風ジェット気流に乗って、数日の間に、米国上空から欧州上空にまで達したとの研究成果を発表した。
一方、高エネ研と環境研は3月15日から空気中の放射性物質の種類と濃度測定を開始。5月15日の9回目の測定結果公表では、①3月28日~4月5日ごろ②4月17日~23日③5月3日~7日④5月22日~26日―の4回、ピークが観測され、北半球の大気循環によって16~19日の周期で最初に放出されたものが飛来している可能性があるとしていた。九州大などの研究よりも早く、さらに具体的だった。
6月30日の10回目の報告では6月11日から15日にかけてもピークが生じたことを報告しており、併せて5回も北半球を回ったことになる。
チェルノブイリ原発事故の際もジェット気流に乗って放射性物資がわが国に運ばれたが、同事故では約16日の周期でピークが生じたという。福島第1原発事故の大気循環の周期は16~19日間としている。
また、東電は6月29日、同月4日に採取した海水から、テルル129mを初検出したと発表した。高エネ研は福島第1原発から約165㌔離れているが、3月15日採取の大気中から既にテルル129mを初検出しており、他にもテルル132、セシウム134、136、137、ヨウ素133、テクネチウム99mなどが検出されている。
つくば市の上空から検出された核種は表のように10種を超えている。これらの結果は、早い段階で核燃料の被覆管が損傷した可能性を示唆する内容だ。
高エネ研は「空気中の放射能濃度は次第に減衰している。今後も測定は継続するが、福島第1原発事故由来の放射性核種の濃度が増加した場合に報告したい」として、定期的な結果公表を終了する方針を示している。