清流に温もり加え収量増 長野県大町市上原・温水路「ぬるめ」 20130922
標高3000メートル級の高山が南北に連なる北アルプス。
山々からの雪解け水は長野県北西部・大北地方の水田を潤す。
大雪渓で有名な針ノ木岳(長野県大町市・富山県立山町、2821メートル)から流れ出る籠川の水は、
夏場でも真冬のような冷たさ。この水を田んぼで使う際に温度を上げる施設が、
標高約800メートルの大町市上原(わっぱら)地区にある。
全国的にも珍しい農業用温水路「ぬるめ」だ。
ぬるめは戦後に入植した人たちが作った太陽光で水を温める浅く長い水路。
現在のぬるめは昭和56年に付け替えられた際、半分ほどの長さになった。
それでも深さ15センチ、幅約16メートルの
曲がりくねったコンクリート製水路の総延長は430メートルにも及ぶ。
ぬるめを通った水は温度を2度上げるといい、取材した8月下旬の快晴の日、
実際に水温を測ると、入り口で12度だった水温が出口では14度になっていた。
地元では「1度1俵」と言われる。
水温が1度上がると1反(約1000平方メートル)あたりの収穫量が1俵増えるとの意味だ。
上原地区で農家を営む鷲沢初枝さん(65)は
「この辺りは市の中心部より標高が高いため米の収穫量が少ない。
ぬるめの効果は分からないけれど、水は少しでも温かい方が稲の生育にいいし、農作業もしやすい」と話す。
ぬるめがあるのは、黒部観光の出発地点となる扇沢へ向かう大町アルペンラインのすぐ横。
15年前まではやぶが生い茂り、一帯は道路からぬるめが見えないほど荒れていた。
しかし、平成12年から地元住民などの有志が草刈りなどに着手。
周辺の雑木林と合わせて2ヘクタールほどの親水公園
「わっぱらんど」として整備され、先人の知恵を知り豊かな自然も楽しめる憩いの場として親しまれている。
(写真報道局 早坂洋祐)
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