真壁 街の本屋さん

ブックウオッチング 街の本屋さん 川島書店(茨城県桜川市)

毎日新聞 20150204 真壁のひなまつりFacebook

歴史の薫り、にぎわい誘い

茨城県の旧真壁町は江戸時代からの町並みが保存される町として知られる。文化庁の登録有形文化財に指定された建物が東日本大震災までは町内に104を数えた。震災で倒壊した建物5件が登録を外れたが、それでも江戸時代をしのばせる建物は数多い。その一つ「見世蔵」の隣に建つ川島書店は、江戸末期から続く商店だ。

書店を経営する川嶋利弘さん(72)は、古文書から判明する限り7代目に当たる。地元に伝わる「名主文書」によると、生薬を扱う「川嶋薬舗」という記述があり、これが店の起源。当主は「清兵衛」を襲名し、木綿を中継する取引や建材などを扱った時期もあった。店にある大正年間の「積荷報告書」には、川嶋清兵衛商店出張所として東京市日本橋区新右衛門町十一番地の住所が書かれていた。

4代前から書店となった。現在の店舗は築後、約50年だが「古い町並みに合うよう看板は古めかしく作っている」。人口が少ない地域だけに店を訪れる客は全員が顔なじみだ。学校への教材の納入や教科書の販売が中心となっている。

町並みは、城下町の特徴で、十字路が直交していない。少しずらすことで「敵の進行を少しでも遅らせる」という往時の工夫が今もみられる。蔵、門、旧家といった家並みが続く。大震災後の文化財の復興事業は今も続く。

川島書店の隣に建つ「見世蔵」は江戸時代後期の建物。以前はここが店舗だった。現在は「まちづくり商店 真壁、八七(はな)咲き社中」(代表は川嶋さん)という町おこし団体の事務所・集会所だ。2000年に文化財登録された。大震災で大きな被害を受けたが、国の補助金で外側は完全に復旧して金属部分は金ぴかに輝く。だが「内部は国の助成がないので、これから」と川嶋さん。

蔵には、幕臣で明治期には茨城県参事などを務めた山岡鉄舟の書とされる「川嶋薬舗」の看板もあった。訪れた日、「真壁のひなまつり」も近いとあって、見世蔵にはひな人形が少し並べられていた。「毎年同じだと人は来ない」と川嶋さん。ことしはオートバイやドラムセットなどと一緒に“楽しく遊ぶ”をテーマに飾るそうだ。

川嶋さんは桜川市観光協会の会長も務める。「行政に頼らない地域活性化を」と若者を巻き込んでさまざまな活動をしている。「ひなまつり」だけでなく、庭園を利用してのジャズコンサート、フォトコンテストといった催しを繰り広げている。川嶋さんはこうした活動を「会をつくらない、補助金をもらわない、人を頼らないの“3ない”でやっている」と話す。

常磐線土浦駅(茨城県土浦市)と水戸線岩瀬駅(同県桜川市)を結んでいた筑波鉄道筑波線は1987年に廃線。代替バスも今はなく、真壁は「陸の孤島」状態になっている。ただ、毎年この時期から始まる「真壁のひなまつり」は、大勢の人出でにぎわう。店内には「ひなまつり」関連グッズも置いてあった。

 

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