いばらき魅力見つけ隊

いばらき魅力見つけ隊
キリンビール取手工場一番搾りツアー 緻密な工程で上質な味わい 
毎日新聞2018年4月10日 

 桜も散って暖かくなってきたこの季節、やはりビールを飲みたくなる。キリンビール取手工場(取手市桑原)に出かけ、「キリン一番搾り おいしさの秘密発見ツアー」に参加した。さわやかでいて繊細な「一番搾り」が造られる緻密な工程を知り、醸造家たちのこだわりを実感できた。

 取手工場は1970年に操業開始。年産約50万キロリットルで、全国9カ所ある同社の工場で最大の製造能力を誇る。敷地の広さは26・5ヘクタールで東京ドーム約5・5個分。高さ20メートルの発酵・貯蔵タンクが百数十本も林立する情景は圧巻だ。

 記者を入れて5人の参加者を案内してくれたのは、「一番搾り」と同じ1990年生まれのツアーガイド、永原咲子さん(28)。参加者の笑顔に働きがいを感じているといい、週に2、3日、「一番搾り」をたしなむという。

 「一番搾り」の材料は麦とホップ、そして水だ。麦芽とホップの現物を手に取って確かめてみた。二条大麦をいったん水に浸して発芽させた後、乾燥させて麦芽を作る。試食用の麦芽をかむと香ばしい。麦芽は色合いと味わいを作る働きがあるという。そしてホップの真ん中にある黄色い部分からはビール独特の香りが漂う。ホップが「ビールの魂」とされるゆえんだ。

 さあ、いよいよ仕込み室に入る。麦芽を煮ると、でんぷんが糖分に分解(糖化)され、甘いおかゆ状のもろみができる。これをろ過したのが麦汁だ。

 「一番搾り」は最初に搾って出た麦汁だけを使っている。一般的なビールはさらにもう1回搾った二番搾りまで使うという。両方の麦汁を飲み比べてみると、明らかに味が違う。一番の方が甘みがあり、ジュースのようだ。永原さんが「麦のおいしいところが引き出され、上質な味わいになります」と笑顔で話した。

 それにしても、甘い麦汁がどうして苦いビールになるのだろう。疑問はすぐ解消された。そこからホップを加えて煮込み、苦みと香りを出す。ここまで約11時間。その後、タンクの中でホップかすなどを沈殿させて分離した後、さらに別のタンクに移し、酵母を加えて約1週間かけて発酵させる。酵母が糖分を食べてアルコールと炭酸ガスが出るのを待つのだ。そこからさらに1~2カ月間も貯蔵・熟成する。最後の工程は瓶・缶へのパッケージングだ。1分間で2000本詰める缶詰ラインはまるで急流の川のようだ。

 ツアーは試飲(20分、3杯まで)も含めて70分間。午前9時半▽10時半▽11時半▽午後1時半▽2時半▽3時半--の1日6回。申し込みは2人以上。月曜と年末年始は休館。予約専用受付(0297・72・8300)

Tags: ,

Leave a Reply