モノオペラ『焼き場に立つ少年』を次世代に伝える会

「焼き場に立つ少年」次世代へ モチーフのモノオペラ、中学校の教材に

東京新聞 2019年12月8日

 原爆投下後の長崎市で撮影され、ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇が来日した際、あらためて注目された写真「焼き場に立つ少年」。この写真をモチーフに作詞作曲されたモノオペラ(出演者が1人のオペラ)を、次代に伝えていこうと、我孫子市、茨城県取手市の有志が立ち上がった。上演内容をブルーレイディスク(BD)に収録し、中学校の教材に採用してもらうことが目標だ。 

 活動を始めたのは、取手市在住のソプラノ歌手岡本静子さん(71)、我孫子市在住の白沢幸雄さん(77)ら両市の市民約二十人。白沢さんを会長に「モノオペラ『焼き場に立つ少年』を次世代に伝える会」を、先月発足させた。

 作品は二〇一三年、八十四歳で死去した作曲家の青英権(ひでのり)さんが、一〇年に完成させた。写真に感動した青さんが当時、住んでいた神奈川県小田原市から長崎市に何度も足を運び、少年の心情に思いをはせて、現地の言葉を詞に盛り込んだ。

 岡本さんは、青さんの意を酌み、作品を取手市や近隣市の中学校で演じてきた。「以前、私は高校の教員で、やはり原爆を題材にした青さんの代表作『組曲ひろしま』を勤務先で歌ってきた。退職後に、中学生を対象にした取手市などの『心の授業』の講師を務めることになり、新作を紹介している」

 上演を重ねるに連れ、岡本さんは「もっと多くの子どもたちに広めたい」との考えを強めていった。「戦争の悲惨さを訴えるにとどまらず、人間同士が助け合う心を育むような音楽作品のように感じている」からだ。

 知人の白沢さんに相談したところ、公の活動として、教材化などを働き掛けようと提案された。白沢さんは我孫子で各種ボランティアに取り組んでいる縁を生かし、市などが主催し、JR我孫子駅前のけやきプラザで今月一日に開いた「平和の集い」で、モノオペラ「焼き場に立つ少年」の上演にこぎ着けた。

 平和の集いは、八月に長崎に派遣された市立中学校の生徒たちの報告を柱とした恒例行事。舞台に立った岡本さんは、取手市音楽協会会員の西元真澄さんのピアノ演奏に合わせ「戦争は終わったばってん 僕の弟は燃えてしもうてもうおらん」「もうちょっと早う戦争の終わっとれば弟は死なんでもよかったとに」と情感たっぷりに歌い上げた。

 白沢さんは「会費やカンパで活動費を賄い、インターネットを介して資金を集めるクラウドファンディングでBD化を進める。まずは我孫子と取手の中学校に無償配布し、各地へと広げていく」と打ち明ける。

 青さんの四男の芸雅(のりまさ)さん(32)は「父が終戦直後の長崎の空気感を表現しようと熱意を込めて仕上げた作品。現代の子どもたちにも共感してもらえると思う。より多くの人に知ってもらえれば」と話す。

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