取手 東京芸大取手キャンパス

取手 東京芸大取手キャンパス アート作品、街に溶け込み 

毎日新聞2019年4月2日 

 取手市では市役所庁舎や学校、駅前など街のあちらこちらに、同市にキャンパスがある東京芸術大の学生が作ったアートが置かれている。毎年開かれる同大生の「卒業・修了作品展」で「取手市長賞」を受賞した作品の数々で、その数は約50点に上る。「芸大アート」を楽しもうと、市内を散策した。

 市役所本庁舎の正面から入ると、案内カウンター脇で巨大なカブトムシが前を見据えていた。美術学部工芸科を先月卒業した野田怜眞(りょうま)さん(23)=取手市=が制作した、2018年度の受賞作「尋常に」。漆を使った高さ2メートルの工芸(漆芸)作品で、先月22日に設置された。

 ヤマトカブトムシと侍をモチーフに「勝負に挑み、精神を集中している姿を表現した」(野田さん)という。刀で立ち向かってくるような迫力を感じ、頭部の金箔(きんぱく)がまばゆい。「今年のラグビー・ワールドカップや来年のオリンピックで、市民が選手を応援する気持ちも込めました」

 卒業・修了作品展は東京・上野で毎年開かれており、同賞は1991年10月の取手キャンパス開校を機に、92年度から始まった。毎回2点が選ばれ、市が受賞者に賞賜(しょうし)金を授与、作品は市に寄贈される。既に27回を数える同賞の受賞作は総数54点に上っており、藤代庁舎保管室に収蔵中の8点を除く46点は市内で展示されている。

 本庁舎には7点が置かれている。1階の社会福祉課前に展示されている、美術学部絵画科卒業の岩崎拓也さん(30)=横浜市=の油画「秘密の花園」も18年度の受賞作。岩崎さんは作品について「水族館や動物園など人工的な空間を意識し、架空の生き物たちが華やかに楽しそうに生きる『不自然な自然』を描いた」と説明する。この作品は、来年1月に旧取手一中跡地に「井野なないろ保育所」が開所後は同保育所に移される予定だ。

 藤代庁舎には彫金「Spirit of mine」(第21回受賞・中本亮さん作)などが並ぶ。関東鉄道の新取手駅前ロータリーには彫刻「the beauty」(第10回受賞・竹内智美さん作)▽関鉄戸頭駅ロータリーにも彫刻3点が設置されている。

 市は今後も同賞の授与を続ける方針で、市文化芸術課の八木有子さん(27)は「東京芸大と交流する取手ならではの取り組みで、作品のある風景が定着している。作品は市民の財産です」と話す。

 東京芸大美術学部先端芸術表現科の佐藤時啓教授(61)は「学生にとって作品展示は作品が人目に触れ、パブリック(公共的)なものになる最初の機会で、励みになっている」と受け止めている。

 作品は「取手アートマップ」(同課で無料配布)に散歩コースなどと併せて掲載されている。【安味伸一】

ひとくちメモ
 新取手駅前と戸頭駅前の彫刻は年月を経て、風合いもほどよく変化しており、風景と調和していた。作品群は取手に贈られた平成のレガシー(遺産)といえそうだ。

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