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いばらき春秋
茨城新聞 20161017
母の介護をしている。デイサービスやヘルパーの助けを借り、自分は雑用を担う。その中に高額サービス費制度の申請がある。
介護サービスの上限額を超えた場合、役所から郵送される申請用紙に必要事項を記入し、領収書を添え提出。1カ月前後で口座に超過分が払い戻される。少ない年金をやりくりする母にはありがたい。
介護サービス利用の自己負担は2000年の制度開始以来、一律1割だったが、膨張する費用を賄う目的で昨年8月、一部の人は2割に引き上げられた。単身で年金収入だけの場合、年収280万円以上の人が対象で、全国約60万人。
政府は来年の通常国会で介護保険制度の見直し法案を提出する考え。2割負担の対象拡大を検討中だ。財務省は当初、所得にかかわらず「65〜74歳を原則2割」と提案。高齢者らの反発が強く、最近は「要介護度の低い人の負担を引き上げるべき」と主張する。
高額介護サービス費も見直される見込み。現在の上限額は、世帯収入に応じ1万5千〜4万4千円の間で4区分だが、政府は4万4千円への統一を検討する
介護離職ゼロを掲げる政府。だが、この案では、母は今よりもサービスを控えることになるかもしれない。自分の負担は間違いなく増える。
とても身近な問題として考えさせられ、わかりやすい記事でしたので掲載させていただきます。
毎日新聞2016年7月7日より引用
「生活費がなくなった。あのままなら一家心中せざるをえなかった」。東京都青梅市の金井輝夫さん(80)は振り返った。
●特養を出る選択
月6万円から12万円へ。特別養護老人ホームで暮らす妻咲知子さん(78)の自己負担額は昨年、はねあがった。夫婦の年金は合わせて月16万円。12万円を特養にあてると残りはわずかで、とても暮らしていけない。仕方なく今年4月、特養を退所した。プロの手厚い介護のある「ついの住み家」の特養ホームを、自ら出る例は珍しい。
突然の値上げは昨年の、介護保険制度の変更でもたらされた。咲知子さんの特養負担額を決める際、それまでは咲知子さんの所得を基準に、食費と居住費が減額されていた。夫婦は別れて暮らし、住民票も別。食費も家賃も別々の二つの世帯を維持させるため「世帯分離」の方法がとられていた。
だが国は介護保険制度の財政難から世帯分離をやめ、配偶者の所得を算入するよう、制度を変えた。家族への配慮はばっさり切り捨てられた。
咲知子さんは14年前に認知症を発症、徘徊(はいかい)を繰り返した末に寝たきりになった。要介護度は5。自力で食事ができず、胃に穴を開け栄養食を流し込む「胃ろう」をつけている。夫の輝夫さんは前立腺がん。背骨や左ひざも痛めており、妻の世話はできない。
介護の負担は同居する次女、佐奈江さん(43)にのしかかる。調理員をしながら週2日のデイサービス、1日2回の訪問介護・看護を利用して何とか両親の面倒を見ている。介護の重労働から倒れて入院したこともある。「母に人生をささげている。そのために離婚もした。そばにいるので安心だけど、大変です」。担当ケアマネジャーの尾高裕一さん(46)は「ご両親とも体調が悪くなると本人がパニックになる」と気遣い、「制度変更で厳しい生活を強いられる家族は多い。もっと血の通った政策にできなかったのか」と疑問を投げかけた。
●離婚するしかない
家族の所得を同一化して、入所費の負担を増やす介護保険制度の変更は、「介護離婚」まで招きかねない事態も生んでいる。
「もう別れる準備をするしかない」。埼玉県内で要介護3の難病の妻(52)を介護する男性(57)は漏らした。妻の病気は悪くなる一方で早晩、特養ホームに入る必要がある。入所に備え短期入所(ショートステイ)を利用してきたが、昨年、居住費などの減額がなくなると知った。
運輸業で働く男性の手取りは月二十数万円。月十数万円にのぼる入所費を工面するのは難しい。妻と離婚すれば、妻は無収入のため減額措置があり、自己負担は約6万円に抑えられる。介護を懸命に続ける男性と妻、2人が食べていくためには離婚しか解決策はない。担当ケアマネジャーは「(国は)一気に厳しい負担を求め過ぎた。離婚の決意は他でも聞く」と、影響の広がりを証言した。
●生活保護が頼み
「100歳まで生きている人が結構いる。あと何年生きるのか……」。義母(90)の行く末について、関東地方の女性(62)が案じた。義母は特養ホームに入所しており、負担は最低ラインの月約6万円。年金は月3万円程度とわずかで、残りは義母の預貯金を崩してまかなう。百数十万円の蓄えから毎年、36万円が確実に消えていく。
底をつく時に備え、役所に相談に行くと「あなた方が面倒をみられるのだからあなた方の貯金が尽きたら来てください」と言われた。「子どもに迷惑をかけまいと、自分たちは貯金して備えようと思っている。私たちの老後はどうなるのか」。女性は憤った。
金銭的に窮した時の最後の頼りが、生活保護だ。都内の施設の相談員は、「介護を理由にした生活保護の申請は、ほぼ機械的に認められる。多くなっているのを実感する」と話す。厚労省が今年3月時点で調べた生活保護の受給世帯数は、高齢者世帯が初めて半数を超えた。
「生活保護はまだいい。そこまで行かない低所得者層が一番困っている」。小平アットホームケアサービス(東京都小平市)の清水太郎・主任介護支援専門員は話す。清水さんはかつて、こんな例を担当した。青果店を営んでいた70代男性が認知症になり、妻が介護した。40歳代の息子は寝たきりで入院、同居するもう一人の息子は失職中。認知症の男性は年金が少ないらしく、利用した介護サービスは月1回の入浴介助だけ。1回千数百円のデイサービスは負担が重いらしく、勧めても利用しなかった。
すずしろ医療生活協同組合居宅介護支援事業所「ねります」(東京都練馬区)の吉川智子ケアマネジャーによると、やや余裕のある家族でもサービスを断念している。要介護3の夫(93)を介護する妻(88)は、ヘルパーに週1回買い物を頼んでいたが昨年、自己負担が1割から2割になったとたん削った。
すべては金次第。国の制度変更はあらゆる家族を直撃している。「本当に必要な人に介護サービスが行き届いているのか、疑問だ」。吉川さんは危惧した。
介護保険の自己負担拡大
厚生労働省は昨年、介護保険制度の自己負担の大幅な拡大を図った。「介護費用の増加が見込まれる中で、制度の持続可能性を高める」のが目的。主なものは(1)基準以上の所得がある場合に、自己負担を1割から2割に引き上げ(2)自己負担の限度額(高額介護サービス費)の引き上げ(3)特養ホームの食費、居住費の減額措置を縮小。縮小にあたり夫婦別世帯でも配偶者の所得を算入するなどした。
助産師 5000人超に新資格 認証制度がスタート
毎日新聞2016年2月4日
助産師の実践的な能力を認証する新制度がスタートした。正常な経過をたどるお産については責任を持って助産ができる通称「アドバンス助産師」。昨年12月、日本助産評価機構が最初の5562人を認証した。
助産師の実績や能力を統一した基準で評価する初の制度。日本看護協会などの関係団体は「いざというときの医師との連携を前提に、正常なお産は助産師だけで対応する『院内助産』の拡大につなげたい」と話している。
新制度は、妊婦の希望が多い助産師によるお産を増やすことで、不足している産婦人科医の負担を軽減し、医師が医療が必要とされる症例に専念できるようにする狙い。関係団体が協議会を設け試験の条件や制度の詳細を決めた。
昨年8月に受け付けを始めたところ、全国3万人余りの助産師のうち想定の2000人を大幅に上回る5723人が申請し、認証事務も遅れる事態になった。日本看護協会の福井トシ子常任理事は「意欲のある助産師がこうした機会を待っていたのでは」と歓迎する。
認証は、計5段階ある助産師の実践能力のうち上から2番目のレベルに達していることを示す。資格を得るには出産の介助を100例以上、妊婦健診を200例以上などの実績が条件。新生児の蘇生法や出産時の胎児モニタリング法などの専門的な研修を受講し、書類審査と試験に合格する必要がある。合格後の院内での活動を支える所属医療機関の承認も求められる。
合格者には認証書と認証マークのバッジが交付され、5年ごとに書類審査と試験に合格すると資格が更新できる。福井常任理事は「継続的に勉強し、母子に安全で安心なケアを提供してほしい」と話している。
水戸市 県助産師会と協定 災害時支援活動で 毎日新聞 20141108
水戸市は6日、大規模災害時の支援活動に関する協定を県助産師会(工藤登志子会長)と結んだ。
協定に基づき、同会登録の助産師が避難所などを巡回し、妊産婦の保健指導や相談に乗るほか、
医療機関への搬送が困難な妊産婦に適切な処置を行う。
同会の協定締結は県内で初めて。
同会登録の助産師は229人。
工藤会長は「東日本大震災ではボランティアとして活動したが、役に立つことが難しかった。
協定により、地域と一体になって私たちを活用してもらいたい」。
高橋靖市長は「妊産婦は心身ともに不安定な時がある。
避難所で精神的なケアをしてもらえるのは心強い」と話した。