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女の気持ち 迷い 

月曜日, 8月 8th, 2016

女の気持ち 迷い 茨城県取手市・大久保悦子さん投稿

毎日新聞2016年8月8日

「わが家の次男は重い知的障害者である」

この文言を私はこれまで何度繰り返してきたことだろう。

次男が障害者とわかって以来、そのことを周囲にアピールしなければ、地域の障害者福祉は進展しない、それは私に与えられた仕事だと思えて、40年以上も親の立場から活動してきた。いわば使命感を持って取り組んできたのである。

どこへ行っても、どんな場面でも、わざわざ言う必要のないときでも、息子の障害を伝え、世の中にどんな障害者がいるのか、その人たちがどんなに大切な存在であるのか、どんな生活をしているのか、何を望んでいるのかなど、周囲に知ってもらおうと努力してきた。この欄に投稿を続けてきたのも、その一環だった。

しかし、相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で起きた殺傷事件を受けて、その気持ちが揺らいでいる。

障害をこんなにも毛嫌いしている人間がいるのだ。もしかすると、同調する人間がほかにもいるかもしれない。しかも、それは私たちの身近にいるかもしれない。

とても怖い。私はもう、息子の障害について何も語らぬほうがいいのではないだろうか。

彼のためと思って行動してきたことが、かえって彼を危険にさらしたり、彼に迷惑をかけたりすることにつながらないだろうか。

今、そんなふうに迷い始めている。