毎日新聞2020年9月4日
いろいろな病気を抱えていたが、腰の痛みに違和感があり精密検査した。今年2月に「全身がんで余命3カ月ぐらい」と言われ、時間がないことに慌ててしまった。
不用品の片付けのほかにやりたいことがあった。9年前に自費出版した、陸前高田の「奇跡の一本松」を主人公にした絵本の改訂版を出すことだ。この二つを成し遂げるために、在宅で痛み止めの薬だけを選択した。
体力がないとこれから闘えない。だが、私は料理が苦手だ。そんなとき、妹が助けてくれた。たくさんの手料理を毎日のように持ってきてくれる。私が飽きないように、さまざまな食材を使って食欲を満たしてくれる。妹は母と一緒に暮らしていたので、母の味と同じなのもうれしい。
一番の好物は、サツマイモを牛乳と塩、砂糖、バター少々で軟らかく煮た「サツマイモの牛乳煮」だ。子どものころから好きで、よく食べている。妹は「お姉さんのサツマイモの牛乳煮は、ポパイのホウレンソウと同じね」と、あきれかえって笑う。本当にその通りだ。
前向きに生きて、たまには冗談も言う。死を恐れることはなく、絵本の改訂版も完成した。今までの人生で、今が一番幸せに思える。これも妹の手作り料理のおかげだ。
「余命3カ月」と言われていたが、今は6カ月を突破した。みっこちゃん、ありがとう!