茨城新聞 20200807
JAとりで医療センター 冨満院長に聞く 新型コロナ院内感染、治療経て教訓
「正しく理解」重要
今後も「正しく理解し、正しく恐れること」が大切と呼び掛ける冨満弘之院長=取手市本郷のJAとりで総合医療センター今後も「正しく理解し、正しく恐れること」が大切と呼び掛ける冨満弘之院長=取手市本郷のJAとりで総合医療センター
新型コロナウイルスの感染が再拡大している。3月末から4月にかけて院内感染が確認された茨城県南地域の中核病院、JAとりで総合医療センター(取手市本郷)は、手探り状態の中で治療と対策に取り組んできた。冨満(とみみつ)弘之院長(54)に当時を振り返ってもらうとともに、今後の注意点を聞いた。当時、副院長として最前線で対応した冨満院長は「正しく理解し、正しく恐れること」や、PCR検査の拡充が大切と訴え、コロナと共に生きる「ウィズコロナ」の必要性を強調した。
■手探りの診療
-当時、院内感染が起きた主な原因は。
当院は感染症指定医療機関であり、新型コロナウイルス感染症に対しても1月から対策を始めていた。だが、それにもかかわらず院内感染を起こしてしまった。当時はPCR検査ができない状況。新規の感染症であり、経路や感染者の症状、病気の進行、治療法など全てが分からない状態だった。手探りで診療を行わなければならなかった。言い訳はできるが、院内感染が起きたので、われわれの予防策では不十分だったことは否定できない。このような事態となったことにおわび申し上げるとともに、亡くなられた方に対し心よりご冥福をお祈りします。
■励ましが勇気に
-病院内の様子とその後の経過は。
医師や看護師らも感染し、病院内の安全を守るために150人ほどの接触者を自宅待機させることになり、大混乱となった。国立感染症研究所や保健所と協力しながら少しずつPCR検査を行い、病院内での安全区域の確認を進めた。マスクなどの医療物資が少ない中、効率性を重視しながら防護レベルを高いところまで引き上げた。その結果、5月には院内感染の終息を発表できた。
-病院に対し中傷もあった。
院内感染を公表したことでさまざまな嫌なことがあった。逆に、多くの方々から励ましや支援も頂いた。激励の手紙、日常品や医療物資(の提供)、寄付などだ。これらの支援のおかげで何とか乗り切ることができた。励ましの声が職員一人一人に勇気を与えてくれたと感じている。
■PCR浸透を
-今、再び感染者が増加傾向にある。
現在、若年層を中心に感染者が急速に増え、地方への感染も拡大している。しばらくは収束が困難と思われる。うまく対処しながら生活する「ウィズコロナ」を考える必要がある。さらに、PCR検査が広く浸透していかなければならない。一貫して、一人一人が(コロナを)正しく理解し、正しく恐れることだ。マスクの着用、消毒、3密を避けることなど、ワクチンや治療法ができるまではこれを徹底していくことが必要だろう。
-病院として今後は。
この3、4カ月の闘いを通じ学んだことを生かしていくことが必要。当院はこの困難の中、職員に団結が生まれ、一丸となり難局を乗り切ることができた。あの苦しみの中で培ったものを糧とし、これからも職員一同、協力しながら前に進んでいきたい。