アウトレット事業:「賞味期限より低価格」ニーズ 「ワケあり食品」に大手小売り続々 ~毎日新聞100815~
時期外れや賞味期限が迫るなどした食品を割安で販売する「アウトレット」事業に大手小売りが力を入れている。品質保持のため、これまで本格的には手がけてこなかったが、格安品を集め景気低迷下で人気のアウトレット業者に流れた消費者を呼び戻したい考え。膨らんだ在庫を処分したいメーカーとも手を組み、集客につなげようとしている。【和田憲二】
◇メーカーと協力
7月31日、東京都大田区のイトーヨーカドー大森店。賞味期限間近のふりかけや製造中に割れたせんべい、商品リニューアルで売れ残った在庫の第3のビール、カップめんなど約30品目が山積みにされた。午前9時の開店直後から客が集まり、半額以下になった1個78円のカップめんを4個まとめ買いした品川区の主婦、清野共子さん(68)は「とにかく安い。品質に難があるわけでもないしね」。
ヨーカ堂は4、5月に首都圏の100店舗以上で、最大で5割安のアウトレット食品のセールを実施。消費者の反応は上々で、いずれも1~2日間でほぼ完売した。同社は毎月開催を決め、自社サイトに「ワケあって販売が困難な商品を募集しています」とメーカー向け告知を掲載し、商品調達を急いでいる。
イオンも自社のネットショッピングサイトに昨年春から「食品アウトレット」のページを常設。ラベルが汚れたワイン(1906円)や傷のあるナシ(5キロ4600円)などを販売中で「店舗でのセール実施も視野にメーカーと協議中」(同社)。6月に初めてセールを実施した松坂屋上野店も「追加発注が必要になる好評ぶり」で次回は11月に開催予定。
各社がアウトレット食品の販売に本腰を入れる背景には、消費者の根強い低価格志向がある。6月の全国消費者物価指数は16カ月連続で前年を下回り、「消費者の財布のひもは依然固い」(セブン&アイ・ホールディングス)という。
これまで小売り各社は商品の取り扱いに関して品質維持の自主基準を設け、賞味期限の場合、一般的に製造日から賞味期限までの期間の3分の1を過ぎた商品は仕入れなかった。アウトレット食品は、品質に問題はないもののこうした基準から商品が外れることをあえて明示し、その分、割安に販売している。
◇PB効果が一巡
スーパーなどは、自主開発でメーカー品より割安なプライベートブランド(PB)商品で需要喚起を図ってきたが、長引く消費低迷でPB効果が一巡し、新たな集客手段が必要になっていた。それと「在庫処分によるコスト削減が最優先」(飲料大手)というメーカーの思惑が一致した。
一方、消費者の低価格志向を受け、こうした商品を「ワケあり商品」としていち早く手がけてきたのがネットによる専門販売業者。通販大手ニッセンが3年前に開設したアウトレット食品の販売サイト「iiフード」では、毎月11日にカップめんやジュースを11円で販売する。小売り大手の参入にも「店舗を持たない低コストの商品管理を価格に反映でき、ギフト商品の解体セールも一年中行えるなどの強みが我々にはある」(同社)と強気だ。
アウトレットの競合業者が増えれば商品の確保も課題となるが、業務用アウトレット食品の販売サイト運営会社「Mマート」の村橋孝嶺代表取締役は「消費低迷で品目、数量とも在庫は豊富。今後も市場拡大が続く」と見込んでいる。