女の気持ち:揺らぐ心 北海道七飯町・岩瀬志帆(主婦・41歳)
毎日新聞 2013年09月02日 東京朝刊
人間は揺らぐものだとある人が言っていた。40代に入り、ずいぶんと心が揺れるようになった。20代の頃なら、勢いに任せて行動したり、決断をしたりすることも、今では足踏みをしている。臆病になっているからなのか、ふがいない自分に石を投げたくなることもある。それは例えばこんなことだ。
家庭内の日々の小さな衝突、職場の人間関係、年老いていく親の将来。積み重なっていく小さな問題を当たり障りのない言葉で、時間を無駄にしないように、誰かをなるべく傷つけないようにと、「処理」をしていく。女性として、社会人として、凜(りん)として生きていきたいものだが、心はいつでも揺らいでいる。知らず知らずのうちに虚構の中にいるのかと考えることもある。
子供の頃に友達と渡った古いつり橋は、いつも下の川を見ずに走って渡った。慎重な友人は倍の時間をかけてこちら側へ来た。あの頃よりも、背中にはいくつもの荷物を背負い、走って渡るほどの身軽さはないが、それでも向こう側に着くまでに年長者のアドバイスや、古い友人の励ましに助けられている。
中でも抗がん剤治療を続けている友人は、「嫌なことはサラっと笑い飛ばしちゃえ」と言って笑う。自分だってつらいはずなのに。
立ち止まったり、忙しさにかまけて物事が進まないのも今の私。呼吸のスピードを受け入れてこれからの人生を生きていくのも私。日々、形を変える月を見ていたら、きっぱりと覚悟のようなものが宿った。
女の気持ち 揺らぐ心 毎日新聞 20130902
人間は揺らぐものだとある人が言っていた。40代に入り、ずいぶんと心が揺れるようになった。20代の頃なら、勢いに任せて行動したり、決断をしたりすることも、今では足踏みをしている。臆病になっているからなのか、ふがいない自分に石を投げたくなることもある。それは例えばこんなことだ。
家庭内の日々の小さな衝突、職場の人間関係、年老いていく親の将来。積み重なっていく小さな問題を当たり障りのない言葉で、時間を無駄にしないように、誰かをなるべく傷つけないようにと、「処理」をしていく。女性として、社会人として、凜(りん)として生きていきたいものだが、心はいつでも揺らいでいる。知らず知らずのうちに虚構の中にいるのかと考えることもある。
子供の頃に友達と渡った古いつり橋は、いつも下の川を見ずに走って渡った。慎重な友人は倍の時間をかけてこちら側へ来た。あの頃よりも、背中にはいくつもの荷物を背負い、走って渡るほどの身軽さはないが、それでも向こう側に着くまでに年長者のアドバイスや、古い友人の励ましに助けられている。
中でも抗がん剤治療を続けている友人は、「嫌なことはサラっと笑い飛ばしちゃえ」と言って笑う。自分だってつらいはずなのに。
立ち止まったり、忙しさにかまけて物事が進まないのも今の私。呼吸のスピードを受け入れてこれからの人生を生きていくのも私。日々、形を変える月を見ていたら、きっぱりと覚悟のようなものが宿った。